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虹の空へ

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かもめ

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(08.07.19 シアターBRAVA)

ひゃー、もう2週間も経っちゃった。
すぐに感想は書いたんだけど、あれこれ考えて余韻に浸って、しまいに
味わいつくして放置。いつもの良くない悪いパターンです。反省。
気を取り直してまとめてみました。

元々、戯曲って苦手なんです(あらま)
「桜の園」と「三人姉妹」は以前に読んだけど、さっぱり面白さがわからず。
シェイクスピアも戯曲の形では読んだことがない(汗)
人の台詞だけでいろいろ読み取るチカラがないんだろうなぁ。
なので、この「かもめ」も藤原竜也くん出演というだけでチケット取って
楽しみにしておりました。
けど、「暗い」とか「眠い」とかの評判を聞くとワタシも自信がなくなり。
「よく睡眠を取ってから行かなきゃダメ」っていうアドバイスもいただいてたのに
プチ熱中症みたいな状態で行っちゃったし(汗)

だけど、これが意外に楽しめたんですねぇ。ヨカッタ~。



この日は13列目、下手サイドブロック。
50倍の双眼鏡持参でたっちゃんをアップで見る気満々。

友人としゃべってると、なんの前触れもなくいつのまにか自然に
お芝居が始まり、あわてて携帯の電源を切るワタシ。
そんな感じでさりげなく、静かに幕が開いた「かもめ」

聞いていたとおりの淡々とした、静かな舞台。
たっちゃんと鹿賀さんの一騎打ちみたいな舞台なのかと思って
チケットを取ったワタシには、ちょっと「あれ?」みたいな(汗)

おまけに出てくる人たちはみんな、なんかちょっと変。
会話が噛み合ってないし、気持ちはすれ違ってるし。
熱烈な恋人同士かと思ったトレープレフ(藤原竜也くん)と
ニーナ(美波さん)でさえ、初っ端からなんだかすれ違ってる。
ニーナがトレープレフに「貴方の戯曲はわからない」とか言ってるよ。
思わず、肘掛けから肘がカクッて落ちそうになったよ(焦)
それも、トレープレフが自作の戯曲を母親たちに見せようと意気込んでる時に。
ニーナ、身も蓋もなさすぎ(笑)

母親のアルカジーナ(麻実れいさん)も息子が張り切って、自分の戯曲を
見てもらおうとしてるのに、退屈な気乗りのしない様子。
あくびまでしてるよ。
おいおい、息子をやさしく見守る気持ちはないのかい!

と、ことごとく意表をつかれたので、なんだこれ?な気分になって。
台詞も行動も、なにもかもがすんなり入ってこない。
意識をフル活用して台詞を聴き取り、理解しようと頑張り、結果、
意外にもものすごく舞台に集中できた感じ。

ハハーン、これがチェーホフの策なのか(違)

舞台の上で派手なことは起こらず(最大の見せ場じゃないのかと思われる
トレープレフの自殺(未遂)シーンさえも見せない)
人物描写としてはそれぞれが発する言葉のみ。
よく使われる、登場人物が別の人物のことを説明口調で語るとか
そういうのもほとんどなかった気がします。
すべてはその人の台詞で推し量り、感じ取る。

いちばん初めに出てきたマーシャ(小島聖さん)は、綺麗なのに
喪服のような黒づくめの服装と裏腹にヤク中でアル中。
いきなり薬を吸い込んでるよ。ええーーーっ?
ここでもう、いったいどんな女性なのか、興味津々。

トレープレフへの恋を伝えることさえせずに、人生のすべてに絶望。
やり場のない鬱屈した思いを自分に心を寄せる冴えない教師の
メドベジェンコにぶつける。
彼へのいらだちはすべて自分へのいらだち。
その、どうにもならない思いが舞台のマーシャから伝わってきました。
小島聖さんは生で初めて見たけど、思いがけず舞台に映える
良い女優さんだなあと思いました。

「エレンディラ」で見初めた美波さんは、野心のために
将来の見えないトレープレフよりもすでに成功している作家の
トリゴーリンを選ぶ。
自分の夢のために後ろを見ず、一直線に突き進んで、結果
捨てられ、傷つき、でもそれに耐えて力強く生きようとする。
そんな女性を終始テンション高く、魅力的に演じてた。
やっぱり彼女、好きです。

麻実れいさんは日本人にしては素晴らしく綺麗なドレス姿。
動きも綺麗で言葉もハッキリと。さすが元宝塚。
可愛らしくて、これぞ女優って雰囲気が良いですね。
かたや母親としてはある意味では愚かで母性が欠如してる。
でも、憎めない、嫌味のないキャラで客席の笑いも誘っていた。

鹿賀さんは「リトルショップ・オブ・ホラーズ」のナレーションで
生声を聞いたことがあるけど(その節は大変お世話になりました)(笑)
生で見るのは初めて。
自分も有名な作家であるのに、大女優のご機嫌を取りながら
でも、若くて美しいニーナにも気のあるそぶりを見せる。
成功した芸術家としての落ち着きが、若いニーナには魅力だったのか。
そんな大人の男性が悩む姿を見せられて、そこに惹かれたのか。
そんな役回りがリアルに感じられる、さすがに大人の役者さん。

他にも合わせて10人の主要キャストが、それぞれの人生を数分間の
芝居で切り取って見せてくれる。
使用人だったり、医師だったり、特別な人は居ないけど、それぞれが
その背負うものを見せてくれる。
それがまた説得力があってリアルに感じられて。
出てくる人物がいったいどんな人なんだろうと、観る側も集中力を高めて
一生懸命観る。
こちらに興味をわかせて、チカラで惹きつける。
それが面白くて。
これが「戯曲」というものだなあと初めて理解できた瞬間でした。

そんなわけで、結果としてワタシは寝なかったんですねぇ。
チェーホフ、凄い!(笑)

舞台が終わってパンフを読んでいろいろ考えたら、10人の登場人物が
それぞれにそれぞれをいろんな思いを抱いてる。
片思いだったり、両思いだったり、その相関関係が面白い。
こんなに繋がってたなんて(驚)

それを知って、またもう一度観たら面白いだろうなあ。
けど、この舞台は1回で観劇で終わり。残念だった~。

役者のちょっとした仕草や表情、目線にも大きな意味がありそうな舞台。
これは前方で見たかった。
双眼鏡は使ったけれど、やっぱりね。
前方席でそこに居る、いろんな人の心の動きを読みとりたかった。
そんな心残りもありました。
あ、かもめの剥製も間近で見たかった(笑)

たっちゃんは今までの舞台と較べると、出番も短く、何人も居る登場人物の
ひとりとして存在する。
そういうたっちゃんは新鮮でした。
他の役者さんとの繋がりやみんなで作り上げる雰囲気を壊さず、そこに
存在してる。
けれど、たっちゃんのトレープレフが出てくると舞台が動く気がして活気づく。
舞台に作られた野外舞台の、その幕のポールに飛び上がって掴まっって
クルッと回ったり、唯一、派手な動きのある役どころだったしね。

未来に希望があふれる姿も、その才能ゆえに苦悩する姿も、いまのたっちゃんが
重なった気がします。
最近のたっちゃんのインタビューを読んだり見たりしたからかな。
「カメレオン」と「かもめ」はたっちゃんの転機になる作品なのかなあ。

そうそう。
見えないもの、そこで起こらなかったことを台詞や演技、セットや照明から想像する。
この作品のそんなおもしろさは、「湖」から始まった気がします。
オープニングのトレープレフの舞台では、その湖を借景にして、効果的な場面が
広がるはずだった。
その後も折に触れて人々の口にのぼる湖の美しさや脅威。
その湖を見たいという気持ちから、この作品に入り込んだ、そんな気がします。

好みじゃないけど(やっぱりワタシは派手で幻想的でインパクトの強い作品が
好きなので)、楽しめる作品でした。
チカラのある役者さんが揃って初めて魅せられる。そんな舞台でした。

余談ですが、ほんとにロシア人の名前は難しい。
舞台を見た直後でも、マーシャとニーナ以外、誰一人として正しく
名前を覚えられませんでした。
ダメすぎる(汗)
by june-sky | 2008-08-04 18:18 | 観劇・演劇
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