人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

虹の空へ

junesky.exblog.jp

「ろくでなし啄木」

(2011.1.29 ソワレ シアターBRAVA 2列目センター)

「ろくでなし啄木」_c0063587_23592458.jpgずいぶん日が経ってしまいました。
じつは観劇直後に感想を書いていたのに
うっかりミスでほぼ書けてた文書を保存し損なって。
コンジョなしのワタシは書き直す気力もなく(涙)
やっとここさちょっとやる気が沸いてきたので
書き直しました。

ってことで、今年初めての舞台は大当たり!
そういえばミタニンの舞台は初めて観るんだった。
そこにたっちゃんと勘ちゃんでしょ。
めっちゃ楽しみで期待値も大きくて、そして
その期待に見事応えてくれた作品でした。

ミタニンの軽妙な台詞の巧さ、思わずクスリとさせられる小技の数々に
若い役者たちのパワフルな演技。
ホントに面白かったわぁ。



客席に着いたらワタシの席に人が居る。。。?
C列だったから3列目だと思ったら、B列から始まってたんですね。
たっちゃんに向かって一歩前進!(嬉)

内容紹介&ストーリー
待望の三谷幸喜書き下ろし新作!
人気実力ともにトップを走る若手俳優 藤原竜也&中村勘太郎、
舞台初共演!
ヒロインには初舞台となる吹石一恵。
そしてものがたりは…
あの“石川啄木”をめぐるミステリー!
石川啄木。27歳で夭折した天才歌人。
残された肖像写真からは、純真で才能に満ち溢れた病弱な
文学青年のイメージが浮かぶ。
しかし一方で啄木は金にルーズで、常に借金を抱え、
女性にも目がなく、愛欲におぼれ、平気で嘘をつき、家族を困らせ、
常に周囲の人々をふりまわしていたとも言われている。
本当の啄木はどっちだったのか?
謎の歌人石川啄木と、彼に翻弄された男と女を巡って物語りは
展開する。
ミタニンが「エロ、エロ」というのでどんだけエロいのかと
思って見たけどそうでもないような。
なんか3人とも照れながら演ってるようで・・・いや、見てるこっちが
照れてるのか。まさに身内感覚w
そう、新選組!関係はみんな身内だからね~。

とにかく台詞のテンポが良くて、あちこちの笑わせどころでは
笑いが起きるし、役者の力も脚本や演出を裏切らず、片時も
退屈せず。
たっちゃんと勘ちゃんの7年越しのラブコールがこういう形で
実ってほんとに良かったと思います。
コメント欄で教えていただいたように、パンフにはその経緯も
詳しく載っていて、それをまた3人が楽しげに語っていて。
吹石さんも負けてないですよ。
初舞台は自分の作品で・・・とミタニンに言われたエピは
「ありふれた生活」で読んだけれど、ミタニンは「3年以内に
また一緒に仕事をしよう」とも言ってたんですね。
「もう約束の期限は過ぎてますけど」って直談判する吹石さんが
逞しい。

同じくパンフで、ミタニンは稽古に入ってから「こんなにも
若さに力があることを忘れていた」と言ってます。
たっちゃんと勘ちゃんのはじけっぷりが予想以上だったので
思った以上に笑いの部分が増幅したと。
それがそのまま作品のパワーになって客席に向かってきてましたよ。

ある年のある日の出来事を回想する形で幕は開きます。
石川一(啄木・ピンちゃん)とその愛人トミと友人テツが
温泉宿で一夜を過ごす。
三者三様の視点から見たその夜の出来事とは…。

温泉宿では障子の開け閉めだけでピンちゃん(藤原竜也)と
トミさん(吹石一恵)の部屋になったり、廊下隔てて向かいのテツ
(中村勘太郎)の部屋になったり。
その開け閉めの位置や加減が大事なんだけど、3人とも台詞を
言いながら芝居をしながら障子の位置を間違えないのがスゴイ。
そりゃもうそれが仕事なんだけど、矢継ぎ早の台詞の量と
合わせて、大変な稽古量だったんだろなあと思います。
でも、そのお稽古場でもミタニンに「楽しそうだったね」と
言われるたっちゃんと勘ちゃん。
どんだけ仲良し(笑)

この3人のキャラがきちんと描かれて掘り下げられて
さらに役者の力でそれぞれの人物の魅力的に見えるので
3人それぞれにハマリ役だと思えました。
キャラにもブレがないから、そういう面でモヤモヤすることが
ほとんどなかったし。
笑いとシリアスのボリュームも絶妙だったなあ。

そういえば生勘ちゃんは初めてでした。
初生勘ちゃんは、もう感心することばかり。
身のこなしといい、台詞廻しといい、間の取り方といい、見てる者の
注意をまったく逸らさない。
ぐんぐん芝居に引き込まれたよ。
もうその一挙一頭足をずーーっと見ていたい。
口跡はもちろん、身体能力もハンパなくてホントに素晴らしい
役者なんだと改めてわかりました。
歌舞伎役者として生まれることの凄さ、大変さをちょっと垣間見たような。
一度、歌舞伎の舞台での勘ちゃんも見てみたい。

何もかもわかっていてピンちゃんの甘言に乗った振りをして
お金を都合付けたり、物書きのことはわからないと言いながらも
ピンちゃんの才能を特別なものと認め、その力になりたい、
トミさんとの仲も上手く行くように見守っていたい、そんな友だち思いの
テツもまた魅力的な愛すべき人物でした。
最初から汗だくで唾も飛ばしての熱演に見てるこっちも熱くなったよ。
その熱演はたっちゃんも同じで。
いろんなものが飛んできそうな最前中央でなくてよかったわ(笑)

ワタシが観ていていちばんテンション上がったのも、テツの側から見た
種明かし的な2幕前半。
あそこは一幕で観たテツの含みを持たせた動きや表情のすべてが
再現ドラマのように演じ直され、解き明かされていってすっごい
面白かった。
トミさんに説明してるテイのテツの言葉に、ワタシも一緒にフンフン
頷いてました。
勘ちゃんは素晴らしい役者さんだねぇ。
間といい、テンポといい、ほんとに芝居を魅せる。
客の意識をそらさないから、ぐいぐい引き込まれます。
さすが歌舞伎界のホープだ。

それに続くピンちゃんの独白のくだりは動きの派手な勘ちゃんに
先に美味しいとこを持ってかれた感があったけど、たっちゃんも
またさすがの芝居を見せてくれました。

ピンちゃんにも思いがけない内に秘めた決意がありました。
二人に自分を殺させよう作戦。
ここでワタシもへぇぇ!と心の中で驚いたよ。
そのためにテツをけしかけてたり、トミさんを言いくるめたり。
ナイフを用意したのもピンちゃんで、リンゴとミカンの思いこみ、
所持金215円が115円になった理由。
そういうことかーーー。
次々と明かされる「実は・・・」という再現ドラマがここもまたスリリング。

このシーンは物書きの苦悩も語られ、シリアスな芝居だったけど
笑わせどころも途中にも盛り込んであったのはミタニンらしい。
計画が上手く行かなかったのは予想以上のテツとトミさんの
優しさが原因。
「こんなはずじゃなかったのに。テツもトミさんも優しすぎて
呆れちゃったよ」みたいな感じで笑ってるぴんちゃんが愛おしい。
貧乏で詩人としても認められず、そのうえ結核になって、
生きることの苦しさを涙を流して語っていたピンちゃんとは
うって変わって、ここはたっちゃんの人好きのする笑顔に
救われる。ほっとする。
この優しい展開もミタニンらしいね。
計画が失敗して、朝日を浴びたときにピンちゃんが
もう一度ちゃんとやり直そうと思えたのはこの二人の優しさに
救われたからかなあと思います。

この独白シーンはほんとにたっちゃんらしい芝居だったけど、
今回のたっちゃんの見どころは、ミタニンも言ってるように
「啄木の二面性を藤原竜也がやったら面白い」ということに
あった気がするし、それが見事に成功していたと思います。
というか、ワタシはそこが好き。
テツやトミさんを丸め込もうと屁理屈を押し通すピンちゃんの
凄みのある表情と相手が理屈を呑んでくれた途端に見せる
子供のような無邪気な表情。
この落差にやられるんですね。テツもトミさんもワタシも(笑)
ほんっとに無邪気な笑顔にだもんなあ。
散々ずる賢い台詞を並べ立てたあとで、「いいこと思いついた!」と
言わんばかりのいたずらっ子の笑顔。
そういう笑顔を見たいから、テツはピンちゃんの理不尽な願いを
叶えてあげるんだろうし、トミさんは私が面倒見てあげなくちゃと
思わせられるんだなあと納得できました。

なんにしろ啄木という人が才能溢れる天才であり、人を惑わす
魅力的な人間だったと信じられること、これがたっちゃんの
芝居で感じられたのがヨカッタ。
勘ちゃんとの掛け合いで、たっちゃんも最大限チカラを
出さないと負けちゃうみたいな、そんな緊張感を持って
演じていたのかなと思う部分もあって、まだまだ舞台人として
たっちゃんの進化は止まらないんだろうなと思わせてくれました。

そして吹石さんですよ。
このひと、ほんとにこれが舞台デビューなの?ってくらい
落ち着いていて、あの二人を向こうに回してちゃんと芝居が
できていてビックリです。
大正ロマン風なお着物がよく似合っていて、風情があって
板の上でも華がある。
ミタニンがコラムで言ってた「新人大女優」のネーミングにも
納得です。

フッキーがらみで思い出しても笑えるのは、無理矢理ピンちゃんに
やらされる、膝の後ろを手でパフパフする合図。
テツを誘惑してその気になったら合図したらいいって教える
動作が膝裏パフパフ。
フッキーは浴衣の裾から足を出して太腿まで見せる大熱演。
ピンちゃんと二人並んで大真面目にパフパフが可愛かったー!
ここは客席もドッと沸いてたよ。

作品としては回想シーンを再現VTRのように役者が演じるって、
舞台なのにTVみたいで、ミタニンのセンスを感じました。
ユニークな演出が面白かった。
そのユニークな再現シーンを、何度見ても楽しめるように演じるのは
役者の力だなとも思いました。
この3人だから退屈せずに見せられた。そう思います。
いろんな種がわかってからもう一度観たいなあと思わせるとこなんて、
ミタニンの思うツボなんじゃないかなー。WOWOWよろ!

冒頭の雨の中、傘をさして立っている啄木。
その後ろには「ろくでなし啄木」のタイトル名が。
そしてに二幕の幕が開くと、同じように啄木が立っているんだけどタイトルが
裏返しの文字になっている。
そのときはわからなかったけど、見終わった後に物事の裏から見た別の側面を
見せられていたんだということを表してたことに気づきました。
このシーンは詩的で印象深くて、ここもミタニンGJ!

広げた風呂敷がまたきちんと折りたたまれる爽快感、ラストに見える希望、そして
勘ちゃんの美尻(笑)
見応えじゅうぶんな作品でした。面白かったよ>ミタニン

「ろくでなし啄木」_c0063587_023123.jpg「ろくでなし啄木」_c0063587_026592.jpg「ろくでなし啄木」_c0063587_0264182.jpg
by june-sky | 2011-02-16 23:28 | 観劇・演劇
<< 「テンペスト」 2/12&13... 「僕のとてもわがままな奥さん」 >>